2012年9月17日
By Toby Elliott / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru
誘発のポリシーを変更して6ヶ月が経ちました。全体としては巧く行って、起こらなくて良い誘発を忘れた場合、対戦相手はそれを指摘しなくても良い、という理念は充分支持を得ました。
7月に裁定を一切変更しなかったのは、この裁定の何が巧く行って何が巧く行かないのかを判別するための時間を取るためでした。そして、その調査の結果、いくつかの問題が浮き彫りになってきました。その問題とは:
ポリシーよ単純たれ! 私たちは、どう進化させるかについて一家言を持つポリシー作成のエキスパートのチームを編成し、ブレインストーミングを始めました。 挑戦すべき仮定は何なのか? 現在のポリシーに知見を適用することによって状況はよくなるか? 創造的な手法はあり得るのか? 私たちはすべての前提を横に置き、腕まくりをした。
私たちは、失効能力のポリシーを進化させました。それは確固たるもので、多くの抜け穴を塞ぐことができました。紙の上ではまったく問題なく働いたのですが、実際上の欠点が明らかになりました。詳細な失効能力のポリシーは、JARと比べられるほどの量になっていました。誘発忘れの処理のためだけにです。覚えるのが本当に難しかったのです。よりよい方法があるはずでした。
ここ6ヶ月の教訓を踏まえ、私たちはいくつかの目標を設定しました。大体重要な順に書くと、こうなります。
可能性を調べていくうちに、他の小さな問題にもでくわしました。しかし、上記の内容だけでも充分に高いハードルでした。どうぞ、これを満たすような解決策を考えてみて下さい。非常に難しく、そして、いろいろと取り組んでいると――JARの長さの解決策ができあがったのです!
皮肉なことに、最終的な解決策は95%が1月のものに戻っていました。これが拒絶された理由は、さまざまな方法で対戦相手が懲罰を左右できたからです。ジャッジを呼ぶかどうかは、その懲罰が自分にとって有利になるかどうかに依存していたのです。
プレイヤーは懲罰について考えるべきではありませんし、まして懲罰を狙ってはいけません。その能力の処理については、ジャッジに長いリストを渡すか、あるいはジャッジが「ジャッジがそうすべきだと考えたら」介入してもよい、とするか、どちらかが必要です。しかしそうなると、フロアを歩いているときにそれを見付けるのはほとんど不可能になりますし、プレイヤーと同レベルの理解力を持たなければならなくなります。無茶な。
突破口は、IPGの基本理念の1つを諦めたときに見つかりました。懲罰と措置が一体のものだという理念です。これは単純に聞こえますが、これまであらゆる違反において生来のものだったのです。IPGの初期において、各違反には「懲罰」という項目がありました。これが削除されたのは、懲罰そのもの以外が何も含まれなかったからですが、これの復活が必要になりました。
この2つをまったく違う規定で扱うことで、私たちは理解できる形で責任を切り分けることができました。そして、これから触れていくように、ルールを充分に短くできたのです。
そうです、これがルールです!
定義:
誘発型能力が誘発したが、その能力をコントロールしているプレイヤーがその存在に気付いたことを示さず、あるいはその効果を宣言し忘れた。その誘発型能力の一部が解決されていたり、誤って解決されていたりした場合、〔ゲーム上の誤り ― その他一般のゲームルール抵触行為〕が適用される。
ここの文章は多少厳密化されました。誘発に気付いたことを示すようになりましたが、順序違いの行動などを誘発忘れと合わせて使えるようになりました。例えば、《従者つきの騎士》をプレイし、トークン箱の中から兵士トークンを探しながら「どうぞ」と言った場合、ゲームの進行のために厳密な順での行動はしていませんが、気付いていることを明確に示しています。
気付いていることを示すのは、ただ解決されるだけの誘発というものがなくなったことからも重要です。「視覚上の効果を持たない」という考え方はこれまで重要でしたが、これは対戦相手が誘発を指摘しなくて言いという考え方とそぐわないことは明白になりました。私がクリーチャーをプレイした後で、《クルーインの打撃者》で攻撃した場合、2/3でブロックしても生き残るでしょうか? その答えは、最善の場合でも、プレイヤーにゲームルール以外のポリシーに関する複雑な理解を必要とします。最悪の場合、同意できない状況になることもあり得ます。今後、両プレイヤーの宣言に基づき、ゲームの局面はどちらのプレイヤーが見ても同じ物になります。
その誘発型能力のコントローラーが、その誘発型能力が解決されるべき時点よりあとで何らかの処理をした時点、あるいは、コントローラーが非アクティブ・プレイヤーである場合にはそのプレイヤーが能動的に優先権をパスすることを示す処理をした時点で〔誘発忘れ〕となる。プレイヤーは急いでゲームの行動を行なうなどして誘発を忘れさせることはできない。たとえば、プレイヤーが自分のドロー・ステップにカードを引いた場合、そのターンのアップキープに誘発する他のプレイヤーの誘発型能力が解決できていなかったなら、その誘発型能力はその時点でスタックに置かれ、懲罰は適用しない。
ここも以前と同じですが、少しだけ表現を厳密化しました。誘発が実際上いつ解決されるべきだったのかということを、理論上いつ解決されるのかと対比して認識することは大切です。例えば、誘発が生じた後、プレイヤーたちがインスタントをプレイしたとします。それら全てが解決されたあとでも、プレイヤーが他の行動を取らない限りは〔誘発忘れ〕ではありません。彼らはまだその誘発型能力が解決されるべき状況でパスをしていないのです。
理念:
誘発型能力は多数存在し、実体が見えるわけでもないので、処理を忘れたことによって厳しい懲罰を与えるべきではない。プレイヤーには自分の誘発型能力を覚えておくことが期待されており、故意に無視した場合は〔故意の違反 ― 詐欺行為〕に該当する。しかしながら、自分の利益になる誘発を覚えておくことは技術である。従って、プレイヤーは自分のコントロールしていない、忘れられた誘発を指摘する義務はないが、指摘したいなら指摘してもよい。
この基本的な理念が、マジック・イベント規定の実際のルール文となりました。技術的には、対戦相手の誘発型能力によって懲罰を受けない、という以外には、それを監督することを許可するルールはありませんでした。しかしながら、その記述だと、懲罰を与えない場合にもジャッジが全ての誘発を確認する必要があるような文面になっていました。これは修正され、対戦相手の責任が正しく明文化されました。
この一文はあらゆることへの魔法の鍵です。細かく見ていくだけの価値はあります。
忘れられた誘発のコントローラーは、その誘発型能力がコントロールしているプレイヤーにとって一般的に有害であると考えられる場合にのみ【警告】を受ける。現在のゲームの局面は、これを決定する際に考慮しない。
「一般的に有害であると考えられる」というのは何でしょうか。これを識別するのに有用な2つのガイドラインが存在します。1つめに、その誘発型能力が存在しなかった場合、そのカードはプレイされるかどうかです。例えば、誘発型能力のない《闇の腹心》は{1}{B}で2/1のバニラです。まずデッキには入らないでしょうから、《闇の腹心》は有害の誘発を持たないと簡単に言うことができます。有害な誘発の存在によってカードは軽くなっていたり、あるいは他の悪用できるような利点を削っていたりすることが多いです。
有害な誘発を有利に使える場合もありますし、その有利さを活かすようにデッキを組むこともあります。しかし、ジャッジにその判断を求めることはありません。難しいからだけではなく、その判断にはゲームの局面を判断しなければならないからです。もし、その種の誘発の1つをちらりと見かけた場合、そこに介入するかどうかをどうやって知ることができるでしょうか。見ていたとしても、例えばコントローラーのライフが1点のときに《闇の腹心》が有害かどうかを確信できるでしょうか?
また、フォーマット内の全ての誘発の中で注意すべきものをイベントの開始前に確認しておくのは非常にいい考えです。例えば、これからM13ドラフトのジャッジをするとしましょう。注意すべき誘発はどれだけあるでしょうか?
これで全部です! もしあなたが事前準備の好きなジャッジなら、これで安心できるでしょう。事前準備なんていらないというジャッジも、安心できます。基本セットだから枚数が少ないんだと思うなら、非常に複雑なアヴァシンの帰還を例に取りましょう。アヴァシンの帰還の場合、全部で――9枚です。
【警告】を出すかどうかは、誘発をどう扱うかには影響しない。そして、〔違反の見逃し〕の懲罰がその能力をコントロールしていないプレイヤーには与えられることはない。
ここで明確にしておきましょう。誘発忘れを扱うためにプレイヤーに呼ばれた場合、【警告】を出すかどうかを決定します。どちらにしても、追加措置の項目の指示に従うことになります。その誘発の性質を問わず、この手順は常に同じです。
また、これによってジャッジがゲームに与えうる損害は最少になります。ジャッジが間違って介入しても、最悪でもルールに反した【警告】が与えられるだけで、プレイヤーはその誘発を次のときには忘れないでしょう。これは最悪の状況としては問題にならないものです。ジャッジは懲罰を与えますが、ゲームの局面への影響を決めるのはプレイヤーなのです。これは正しいあり方だと言えるでしょう。
ジャッジは、【警告】を与える意図があるか、コントローラーが故意に誘発を忘れていると疑う理由がない限りは誘発忘れの状況に介入してはならない。
プレイヤーは状況を処理するためにジャッジを呼ぶことになりますが、ジャッジの方から介入するのはこのガイドラインの通り、有害な誘発が忘れられている場合にだけになります。もちろん、プレイヤーが故意に自分の誘発を忘れている疑いのある状況を見付けることもあります。その場合はプレイヤーを呼び出し、何が起こっているのか調査することは当然です。
追加措置
以前の通り、頭から順に答えを見付けるまで指示に従って下さい。答えを見付けたら、それ以上読む必要はありません。
誘発に、その誘発のコントローラーによって行われる選択に伴う選択しなかった場合の処理(「〜しないかぎり」「そうでなければ」)が定められている場合、その処理をスタックを使わずに即座に行なう。その処理の結果適正でなくなる未解決の呪文や能力がある場合、それらの呪文や能力すべてを取り除くまでゲームを巻き戻す。その処理の結果誘発したものは誘発したままであり、通常通り解決される。
この部分は、この違反が制定されたときからずっと誘発忘れの一部で、信じられないほどに長生きです。私は、この分類に入る誘発の中で有害でないものはないと_信じて_います。そう見えるものがあったら魅了されることでしょう。
誘発によって生成した効果の持続時間がすでに過ぎている場合、あるいは1ターン以上前に忘れられた誘発については、プレイヤーにゲームを続けるように指示する。
ここには2つの大きな点があります。対戦相手が気付くためにどれだけの時間誘発が待機すべきかについて、コントロールしているプレイヤーと同じ、から、ターン周期まるまる、まで議論を重ねました。長すぎれば、奇妙な相互作用を生成することがあり得ます。短すぎれば、気付かれないようにする不正行為を引き起こし、嫌な気分にします。1ターンというのはいい妥協点ですし、ターン周期と同様、複雑な定義が必要ありません。ただ1ターン後を示すだけです。プレイヤー1が自分のターンのアップキープ開始時の誘発を忘れた後、プレイヤー2のメイン・フェイズにそれに気付いたら――もう1ターンは過ぎています。直感的にすることができるのであれば、わざわざ他の定義を作るよりもいいでしょう。
そう、これでターン周期はIPGから無くなりました。実際に必要としていたのは〔誘発忘れ〕の処理だけで、他の場合(間違った領域にカードがある場合)の処理はより単純なターンという考え方で問題ありません。ジャッジが学ぶことが減れば、そのほうがいいのです。
持続時間による消失は、いくつかの異常な状況を回避します。ターン終了時までクリーチャー1体に+2/+2の修整を与えるという誘発があったとして、これを忘れた場合、対戦相手は気付くのを自分のターンまで待ち、それから指摘することで、《大物潰し》の対象になるようにすることができてしまいます。同じ事が《聖トラフトの霊》や《屋根職人の反乱》のトークンにも言えます。
この限定に関する規則は、措置にだけ適用されるということに注意が必要です。プレイヤーが3ターン前の《吸血鬼の裂断者》の誘発忘れに気付いてジャッジを呼んだとしたら、あなたは【警告】を与えることになります(何回忘れていたかにかかわらず、【警告】は1回だけです)が、それ以上の処理はありません。
そうでなければ、対戦相手は、コントローラーにその誘発型能力をプレイさせるかどうかを選ぶことができる。そうした場合、その忘れられていた能力をスタックの該当する場所またはスタックの一番下に置く。その能力が本来誘発するべき時点でその誘発が参照していた領域に存在していなかったオブジェクトを含む選択を行なうことはできない。たとえば、プレイヤーにクリーチャーを1体生け贄に捧げさせる能力であれば、能力が本来誘発していた時点で戦場になかったクリーチャーを生け贄に捧げることはできない。
待って下さい。これで終わりですか? 本当に? はい、これで終わりです。あなたが呼ばれたら、あなたは【警告】を出すべきかどうかを決めます。そうしたら、対戦相手にその誘発を今スタックに置くかどうかを聞くだけでほとんど終わりになります。
この違反で使われていたことを振り返ると、素敵な帰結があります。この違反の中には「〜してもよい」という誘発に関しての記述はなくなりました。これは、今の方が巧く行くからです。何らかの理由で対戦相手がその誘発をスタックに乗せたいと思った場合(適正な対象が《幻影の像》しかないときの《修復の天使》とか)、そうすることができます。その後、多くの場合、コントローラーは何もしないことを選ぶことができます(ゲームの局面に誘発が何も影響を及ぼさないようにするということです。ほとんどは、両プレイヤーが無視した場合のようにただ通り過ぎるだけです)。《吠えたける鉱山》のような対称な誘発についても、何も特別な取り扱いは必要ありません。あなたの対戦相手が両方の半分を判断しますので、動機の通りになります。痛みを伴う誘発を何か取り上げ、それを新しい措置に従って判断してみて下さい。おそらくあなたも新しい結果を気に入ってくれることだと思います。
最新版を作るためのチームを紹介しなければ、不注意のそしりを受けることでしょう。出来が良かったら、彼らの手柄です。出来が悪ければ、批判は私までどうぞ。
そして、この6ヶ月の間にフィードバックや示唆を下さった皆さんも。いつも通り、コメントは歓迎です。