ウィザーズ社公式サイト「Pro Tour Geneva 2007 articles」より。 プロツアーで公開された、トーナメント運営の新しい指針 コラム/ルール:ルール・罰則に関する重大な変更 【原文URL】 http://www.wizards.com/default.asp?x=mtgevent/ptgen07/rulesfeat 【本文&ヘッダ】 ルール・罰則に関する重大な変更 by スコット・ジョーンズ Translated by YONEMURA "Pao" Kaoru 2007年2月11日 ----  優秀なトーナメント・プレイヤーであるためには、重要なルール変更を理解する必要があります。今回のイベントでは、重要なルール改訂と同時に、ペナルティ・ガイドラインの一新もまた行なわれました。私(スコット・ジョーンズ)はレベル4ジャッジのトビー・エリオット、そしてDCIジャッジ・マネージャー兼調査マネージャーのアンディ・ヘクトから、今回の変更についての説明を受けることができました。 ★ルール変更について [Momentary Blink]  カードについての裁定という意味では、次元の混乱に伴う2月1日づけのルール更新で一番大きなものは《一瞬の瞬き》の、トークンとの相互作用でした。「《一瞬の瞬き》」と「トークンとの相互作用」と聞いてピンと来ない人は、誰かルールに詳しい人に聞いてみてください。 ※上の行、本来はPT神戸の記事にリンクされていますが、訳されていないので割愛します。訳す必要もないでしょう。  次元の混乱以前は、トークンを場から離した直後、状況起因効果のチェックが行なわれるタイミングより前に場に戻せば、トークンは場に戻りました。ゲームから取り除かれたトークンが場に戻ってくることはない、というルールが存在していたのは事実ですが、それは状況起因効果によるものだったのです。次元の混乱後のルール改訂で、戻らないように表現が変更されています。現在は、トークンが場を離れたら、二度と戻ってくることはありません。《一瞬の瞬き》を自分のトークンにプレイしても、そのトークンは場に戻ってこないのです。また、《ちらつくスピリット》のコピー・トークンを作ってその能力をプレイしても、そのトークンは場に戻ってきません(ちらついている間に消滅し、戻ってくることはないのです)。  カードに関する他の変更は、《虚空の大口》と《虚空の力線》の、複雑怪奇な、いわゆるグル・レベルの相互作用に関するものです。以前のルールでは、《虚空の大口》を無限にパンプ・アップすることができました。《虚空の力線》があると、《虚空の大口》の能力を使ってもカードはゲーム外にあるままで、従って再びパンプ・アップ能力を使うことができたのです。新ルールでは、この奇妙なふるまいは発生しなくなり、《虚空の大口》は本来想定されていた通りの動きをするようになりました。 ★新ペナルティ・ガイドライン  トーナメント・プレイヤーにとって、より重大なことは、ジュネーブは新しいペナルティ・ガイドラインが適用される最初のプロツアーだということです。これは現在のペナルティ・ガイドラインとは全く異なったものになります。プロツアー・ホノルルで発生した問題により、アンディ・ヘクトとトビー・エリオットはあらゆることを再評価・再考察すべきだと判断しました。  大きな問題は、認定イベントにおけるジャッジ理念の変更によります。以前は、ゲームの状態が不正になっていた場合、ジャッジが盤上を戦略的に考察し、その問題がどの程度重大なのか、そしてどうすることが最適な修復方法なのかを見つけるという難しい判断を求められていました。  これらの問題を回避するために、新しい理念では、両方のプレイヤーにゲームの状態を適正に保つ完全にして正式な責任があるということになりました。プレイヤーAが不正なプレイ(《アルマジロの外套》を《砂丘乗りの無法者》につけるなど)をした場合、その問題に気付くのは両方のプレイヤーの責任になったのです。  以前のシステムの下では、対戦相手が不正なプレイをすることを手ぐすね引いて待つような不誠実なプレイヤーが利益を得ることがありました。不正なプレイを故意に見逃し、1ターンか2ターンしてから「気付いて」ジャッジを呼ぶと、ゲームの状態が戻せないほどに壊れていると判断したジャッジが不正なプレイをしたプレイヤーに【ゲームの敗北】を出す、ということになりえたのです。  この問題を解決するために、両方のプレイヤーがゲームの状態を適正に保つ責任を持つ、という新しい理念が導入されることになりました。  以前のシステムでは、ペナルティ・ガイドラインには『プレイミス』として広汎な状況を処理する区分があり、従って罰則の適用も非常に広汎なものになっていたため、イベントごと、地区ごとにルールの適用が異なるという結果になっていました。以前『プレイミス』として一纏めにされていたものを、今後は『ゲーム・ミス』と『トーナメント・ミス』の2つに分けて処理します。新ペナルティ・ガイドラインは、それぞれの違反に関する特徴的な例を挙げ、どう処理するべきかをまとめたものになります。基本的な理念として、ゲームの状態を適正に保つのは両方のプレイヤーの責任になりました。 [Dunerider Outlaw]  『プレイミス』は2つに分類されます。『大会手順の誤り』はフロアルールや汎用トーナメント・ルールの違反として定義され、遅刻や遅いプレイなどがここに分類されます。他方は『ゲーム手順の誤り』で、《アルマジロの外套》を《砂丘乗りの無法者》につけるなどのマジック総合ルールの違反のことになります。『ゲーム手順の誤り』は、誤った行為をしたプレイヤーに与えられる警告が4種類に分けられ、それを見逃した対戦相手にも『ゲームの状態を適正に保てなかった』という5種類目の分類による警告が与えられることになります。  ここでは、4種類の『ゲーム手順の誤り』それぞれの例を挙げ、どう処理するかについて記します。これは新しいペナルティ・ガイドラインを用いる最初のイベントなので、まだ完全なものではありません。変更が多いので、ジャッジたちも現状と理想について考える必要があります。しかし、まもなく、新しいポリシーがDCIドキュメント・センターで公開される予定です。ルール適用度の高いイベントを運営するにあたっては、公式な文書を確認するためにそのページを見る必要があります。以下に述べるのはあくまでも変更点の概略であり、間もなく行なわれる変更に関しての注意を喚起するとともに、公式なポリシーが公開されたときにすぐに理解できるようにするためのものです。 1)表現上の誤り  《砕土》をさっさと墓地に置いてから土地を探すような、手順上、あるいは記述上の小さな誤りがここに分類されます(この場合、正しい手順としては呪文を完全に解決してから墓地に置くのが正しい手順です)。 処置:誤りを犯したプレイヤーは【口頭での注意】を受け、どうするのが正しいか指導されます。 2)不正なゲームの状態  過去のどこかの時点で何かを行なったせいでゲームの状態が不正になっている場合はここに分類されます。(例:数ターン前に《アルマジロの外套》を《砂丘乗りの無法者》にプレイして、その後それによって数回攻撃を重ねてライフの総量が変動しているような場合) 処置:状況起因効果は即座に適用され、その誤りを犯したプレイヤーに【書類による警告】が与えられます(ジャッジが故意でないと判断した場合です。故意であると判断したら、不正行為としてはるかに厳しい罰が与えられることになります)。対戦相手には、ゲームの状態を適正に保てなかったことによる【書類による警告】が与えられます。例に示されている場合、この問題が発見されたらすぐに状況起因効果が適用され、《アルマジロの外套》が墓地に置かれます。その上で、誤りを犯したプレイヤーには不正なゲームの状態を作り出したことによる【書類による警告】、その対戦相手にはゲームの状態を適正に保てなかったことによる【書類による警告】が与えられます。 3)誘発型能力の見逃し  この違反は、どのような誘発型能力が見逃されたかによって細分化されます。選択肢を含む任意的誘発型能力は、選択が必要な行動をしなかったものとして処理されます(つまり、エコー・コストの処理を忘れた場合、エコー・コストを支払わなかったものとして処理されます)。  待機のような、選択肢を含まない強制的誘発型能力については、この問題を発見するために「ターン周期」の時間が与えられます。本稿では、「ターン周期」というのは現在のステップからちょうど2ターン後のそのステップが終わるまで、つまりプレイヤーAのアップキープからの「ターン周期」は、次のプレイヤーAのアップキープの終わりまで、というように理解しておいてください(厳密な定義については正式なルールが公開されたときに確認することをお薦めします)。  待機の時間カウンターを取り除くのを忘れたあと、次のあなたのアップキープの終了までにそれに気付くことができたら、カウンターを取り除いてゲームを継続することができます(時間カウンターを取り除くのを忘れたことに次のアップキープになって気付いた場合、2つのカウンターをまとめて取り除くことになります)。  問題になるのは、選択肢を含む強制的誘発型能力です。選択肢を含む強制的誘発型能力が見逃され、それをターン周期の間に見つけることができた場合、その誘発型能力を即座にスタックに積みます。信じられないでしょうが、このような処置を必要とするのは両方のプレイヤーの手落ちによるものだということを考えてください(これによって不正に利益を得ることができるようになると感じるかもしれませんが、全ての違反はプレイヤーの履歴に記載されます。従って、ジャッジは過失でなく故意による不正である可能性を考慮することができます)。 4)ゲーム・プレイ上の誤り  これは「その他」の分類です。上記3種類のどれにも分類されないゲーム手順の誤りは全てここに分類されます。誤ったマナ・コストでカードをプレイしてしまったとか、攻撃しなければならないクリーチャーが攻撃に行かなかった、など様々なものが含まれます。 処置:現在のゲームの状態が変化しないうちに気付いたのでなければ、両方のプレイヤーが【警告】を受けます(違反したプレイヤーはゲーム・プレイ上の誤りで、対戦相手はゲームの状態を保てなかったことによります)。今までのルールとは違っていますが、これは両方のプレイヤーがゲームを適正に進める義務を持つようになったことの反映です。 5)ゲームの状態を保てなかった  これは特別な分類で、対戦相手がゲーム手順の誤りを犯したことを見逃したプレイヤーが受ける【警告】です。 ★まとめ  ここまで言ってきた通り、これは新しいポリシーの定義でもなければ変更点全ての記述でもなく、このような変更が行なわれるという連絡に過ぎません。最後に、プレイヤーが留意すべき変更点についていくつか挙げておきます。 [Wrath of God]  種々のゲーム手順の誤りが数種類に分けられるわけですが、違反の繰り返しによる罰則の格上げに関してはその違反が繰り返しといえるだけ近いものかどうかが考慮されます。例を挙げると、呪文のプレイ時にコストを間違えて【警告】を受けたプレイヤーが、次のマッチで、攻撃しなければならないクリーチャーで攻撃するのを忘れた、という状況では、どちらも上記第4分類のゲーム手順の誤りですが、まったく異なった過失なので(故意でなければ、という前提つきで)自動的に【ゲームの敗北】に格上げになることはありません。一方、《神の怒り》を{1}{W}{W}でプレイしてしまったプレイヤーが、後に他の呪文のマナ・コストを間違ってプレイした場合、これは充分に近い過失なので、【ゲームの敗北】に格上げになることがあり得るでしょう。  これと同じ論法が、対戦相手の過失を見逃したことによる警告にも適用されます。この分類は広いので、プレイヤーは色々な理由でこの罰を受けることが考えられます。そして、この種の違反はそうそう格上げになることはないでしょう(ただし、これは一般論です。見逃してもいいという言い訳にはなりませんよ)。  もう一つの変更点は、新しいシステムでは、プレイヤーが自分のミスに気付いた直後、まだそれによって利益を得ていない間にジャッジを呼ぶと、ヘッド・ジャッジの判断で罰則を格下げすることが認められるようになりました。例えば、対戦相手にデッキを渡し、相手のデッキをシャッフルしている間に、60枚目のカードがサイドボードの上に置かれていることに気付いた場合、その直後、ゲームの開始前に即座にジャッジを呼べば、ヘッド・ジャッジは通常の罰則よりも緩い罰を与えることにしてもよくなったのです。  最後に、双頭巨人戦のように「マッチ」が2本先取でなく1ゲームからなる形式においては、もう一つ注目すべき変更点があります。このような形式では、【ゲームの敗北】は【マッチの敗北】と同じことになり、場合によっては厳しすぎることになっていました。そこで、【1マッチ・ポイント剥奪】という罰則が新しく定義されました。双頭巨人エクステンデッド戦でチーム内に《頭蓋骨絞め》が8枚登録されていたような場合なら【マッチの敗北】が与えられることになるでしょうが、今までは【ゲームの敗北】つまり【マッチの敗北】にせざるを得なかったような小さな違反については、【1マッチ・ポイント剥奪】という措置が取られることになります。この場合、そのマッチの勝敗に関らず、現在のマッチ・ポイントから1点が引かれることになります。もし19点で迎えたラウンドの間に【1マッチ・ポイント剥奪】の罰則を受けたなら、18点のマッチ・ポイントを持っていることになります。そのラウンドで負けた場合は18点のままになりますが、勝った場合には勝って得られるポイント(通常は3点)を加算することになります。  基本的には、見落としをしないようにしましょう、ということです。対戦相手と協力して、ゲームが適正にプレイされるようにしましょう。そして、何か不安があれば、ジャッジに問い合わせましょう。間もなくこのルールが公開されますので、ルール・ページのチェックを怠らないようにしましょう。  あと、《一瞬の瞬き》を自分のトークンに使ったりしないようにしましょう。