*マジック* 裁定集
2002年2月

最近の裁定集

Paul Barclay、マジック・ルールチーム 編(*ぱお*/米村 薫 訳)

逆転と訂正

1) 効果の持続(Rule 418.3d)

 これまでの「効果の持続期間が、その効果が発生するよりも前に終了した場合、その効果は何もしない。開始してすぐまた停止する、ということもないし、永続するということもない。」というルールは「タップ保持」能力に関する裁定を意図していた。あまりにも広く適用されることになっているので、"〜する限り/as long as"というフレーズを用いてその効果をより限定的にした新しいルールを制定し、これと置き換える。

418.3d 起動型能力または誘発型能力によって発生する効果の中には、「〜する限り/as long as」という表記で限定される持続時間を持つものがある。この「〜する限り」というフレーズで示される期間が、起動型能力が宣言され、あるいは誘発型能力がスタックに積まれ終わってからその効果が最初に適用されるようになるまでの間に終了していた場合、その効果は何もしない。開始してすぐまた停止する、ということもないし、永続するということもない。

2) 領域変更誘発型能力(Rule 410.10)

 領域変更誘発に関するルールは、《上天の裂け目/AEther Rift》と《ヨーグモスの行動計画/Yawgmoth's Agenda》に関する、墓地以外の領域へのディスカードによる奇妙な問題を解決するために更新された。

410.10. カードやパーマネントが領域を移動することを含む誘発条件は「領域変更誘発」と呼ばれる。領域変更誘発を持つ能力の多くは、領域が変わった後でそのカードに何かしようとする。解決中に、これらの能力はカードを移動先の領域で探す。その指定された領域でそのカードが見つからなかった場合、そのカードに対しての効果は失敗する。能力によるカードの捜索は、カードがその領域に入らなかった場合や、能力の解決よりも前に指定された領域を離れた場合、あるいはその移動先の領域がライブラリや対戦相手の手札などで非公開な場合に失敗する(このルールは、能力の解決よりも前に、カードが領域を離れてまた戻ってきた場合でも適用される)。領域変更誘発の最も一般的な例には、場に出た時に誘発する能力と場を離れた時に誘発する能力とがある。

3) 場以外の領域でも有効な能力(Rule 402.8, 412.3, 412.4)

 それぞれの領域で有効な能力についてのルールは、場領域以外でもプレイできる能力全てを網羅するように明確化された(rule 402.8)。代替コストや追加コストに関するカードの能力は、スタック上にあるときに働くと定義された(rule 412.3)。いつプレイできるかを定義するカードの能力は手札にあるときにのみ働くとされていたが、そのカードをプレイできる領域ならどこででも使えるように拡張された(rule 412.4)。

402.8. 能力は、そうでないと書かれているか、あるいは場以外の領域にある時にのみ効果を発揮するものでない限り、その能力を持つパーマネントが場にある間にのみ機能する。
例:コストに「このカードを手札から捨てる」ことが含まれている能力は、手札にあるときにのみプレイできる。
412.3. ある種の常在型能力は、呪文がスタックにある間に適用される。それらは多くの場合、呪文を打ち消すものである。また、「〜をプレイするのに本来のコストに加えて」「[このカード]のマナ・コストを支払うのではなく、[コスト]を支払ってもよい」といった能力も、そのカードが呪文としてスタックにある間に働く。
412.4. ある種の常在型能力は、カードがそれをプレイできる領域(通常は手札)にある間に適用される。それは「あなたは[この呪文]をプレイしてもよい/you may play [この呪文]」「あなたは[この呪文]をプレイできない/you can't play [この呪文]」と書かれているものに限られる。

4) ダメージ軽減の盾(Rule 419.7b)

 ダメージ軽減の盾を作る呪文や能力に関するルールの中で、複数の発生源から同時にそのクリーチャーやプレイヤーにダメージが与えられたときにどう処理するかということを明記する。「シールドされた」プレイヤー、あるいは「シールドされた」クリーチャーのコントローラーがどう盾を適用するか決める。
 (キッカーつきの《ウルザの激怒/Urza's Rage》のもののような)軽減できないダメージは、盾を減らしたり消したりしない。盾は、ダメージを実際に軽減したときにのみ減少・消滅する。

419.7b ある種の軽減効果は、一定の量のダメージに対処し、消耗する。例えば、「このターン、対象のクリーチャー1体か対象のプレイヤー1人に与えられる次のダメージを3点軽減する」。「シールドされた」クリーチャーかプレイヤーへ与えられる筈のダメージ1点につき、代わりにシールドを1減らす。複数の発生源から同時にダメージを受けた場合、その「シールドされた」プレイヤー、あるいは「シールドされた」クリーチャーのコントローラーが、どのダメージを先に軽減するかを決める。シールドが0まで減ったら、残りのダメージは通常通り与えられる。この種の効果は、ダメージの量だけを数え、ダメージを与えるイベントやダメージ源の数は問題にしない。

5) 逆転:追加ターン(Rule 300.6)

 あるターンの間に追加のターンを得たときのルールが、連続したターンの中で(《時間の伸長/Time Stretch》によって)追加のターンを複数得た場合の処理と一貫性を失っていた。これは修正され、もっとも最近に作られたターンが、もっとも最初に来るようになった。新しいルールは以下のとおり。

300.6. 呪文や能力によって、プレイヤーは追加のターンを得ることがあり得る。その場合、得たターンを現在のターンの直後に追加する。1ターンの間に、1人のプレイヤーが複数の追加ターンを得たり、複数のプレイヤーが追加のターンを得たりする場合、その追加ターンは1つずつ追加される。そして、もっとも最近に作られたターンがもっとも最初に処理される。

 これは以前のルールの逆転であり、以前は作られた順番で処理されることになっていたが、今のルールではLIFOによって処理されるようになった。

明確化

1) 交換(用語集)

 詳細ルールにおける『交換』の項目は、パーマネントの交換が2人のプレイヤーに関するものでなければならないと明確化された。以前の『交換』に関するルールはこの点について不明瞭であった。交換できるものについての条件も拡張された。

【交換/Exchange】
 呪文や能力は、2人のプレイヤーに、解決時に(ライフの合計や2つのパーマネントのコントロールなどの)何かを解決時に交換するように指示することがある。その種の呪文や能力の解決時に、その選択されたものが交換できなかった場合、何も効果は発生しない。例えば、呪文が2つの対象のクリーチャーのコントロールを交換するように指示していて、その解決時に片方が破壊されていた場合、呪文は何も効果を表わさない。あるいは、2つの対象のクリーチャーのコントロールを交換するように指示していて、その両方を同じプレイヤーがコントロールしているときも効果は発生しない。
 2つのパーマネントのコントロールが交換されたとき、それぞれのプレイヤーは同時にそれまで他のプレイヤーがコントロールしていたパーマネントのコントロールを得る。
 ライフの合計が交換されたとき、それぞれのプレイヤーはその変化分だけライフを得たり失ったりする。それらの増減に関して、置換効果は影響を及ぼすことがありえるし、誘発型能力が誘発することもありうる。
 呪文や能力の中には、2つの異なった領域にあるカードを交換するように指示するものもある(例えば、ゲーム外にあるカードと手札にあるカードを、など)。これらの呪文や能力は、そのコントローラーが同一であっても働くということを除いて、他の「交換」する呪文や能力と同じように働く。

2) 『召喚酔い』(Rule 214.7c)

 新しいルールを詳細ルールに追加する(Rule 214.7c)。これは、『召喚酔い』に関するルールを詳細ルールから集めたものである。

214.7c プレイヤーがクリーチャーのコントロールを得てから、次のそのプレイヤーのターン開始時までは、起動コストにタップ・シンボルを含むクリーチャーの起動型能力をプレイしたり攻撃に参加したりすることはできない。速攻能力を持つクリーチャーはこのルールを無視する(Rule 502.5 参照)。

3) 墓石アイコン(用語集)

 _オデッセイ_セットで導入されたカードの中に、名前の隣に墓石アイコンがあるものがある。このアイコンの用途を明確化するために、新しい項目を追加する。

【墓石アイコン/Tombstone Icon】
 _オデッセイ_セット以降、墓地にある間に有効な能力を持つカードの名前の左隣には墓石アイコンがある。このアイコンは、そのカードが墓地にあるときに区別しやすくするためのものであり、ゲーム上の意味はない。

4) 代替コスト・ルール(Rule 409.1b)

 フラッシュバックのような能力による代替コストは選択的ではない。フラッシュバック能力を用いて呪文をプレイした場合、そのマナ・コストではなく、フラッシュバック・コストを支払わなければならない。この事実を反映するために、Rule 409.1bを更新する。

409.1b 呪文や能力がモードを持つ(「一つを選ぶ −/Choose one -」「[特定のプレイヤー]は一つを選ぶ −/[特定のプレイヤー] chooses one -」という語句を使っている)場合、プレイヤーは選択したモードを宣言する。呪文や能力が((X)で示される)可変マナ・コストやその他の可変コストを持つ場合、プレイヤーはモード選択時にその変数の値を宣言する。呪文や能力が代替コスト、追加コスト、(キッカー・コストやバイバック・コストなどの)その他の特殊なコストを持つ場合、そのプレイヤーはそれらのコストをすべて、あるいは一部を支払う意図を宣言する(rule 409.1f 参照)。それ以前の選択(呪文を墓地からフラッシュバックでプレイする、という選択など)は、この選択を行う時の制約となりうる。

5) 多色呪文(Rule 203.2)

 Rule 203.2は不明瞭だった。単に読む限りだと、2WWのマナ・コストを持つ呪文は多色だと読むこともできた。そのような誤解をなくすため、このルールを書き改める。

203.2. カードの色は、マナ・コストに含まれるマナ・シンボルの色である。カードの背景色や枠の色は関係しない。例えば、マナ・コスト(2)(W)のカードは白であり、マナ・コストが(2)(W)(B)のカードは白でも黒でもある。コストの中に色のついたマナ・シンボルを含まないカードは無色である。マナ・コストの中に、5種類の色のうちで2種類以上の色のマナが含まれているカードは多色である。多色のカードは金色の背景で印刷されているが、背景が金色でなくても多色であることがありうる。

6) パワーやタフネスを変更するカウンター(用語集)

 マジック詳細ルールにおいて、パワーやタフネスを変更するカウンター(+X/+Y カウンター)の効果について定義する。これらのカウンターの機能に変更はないが、今までのルールでは省略されていた。

【カウンター/Counter】
 カウンターは、パーマネントの上に置かれる目印のことを指す。それはそのパーマネントの特性を修正したり、あるいは何らかの能力との相互作用を示したりする。パーマネントの上に+X/+Yカウンターが載っている場合、そのパーマネントのパワーにXを、そのパーマネントのタフネスにYを加算する。これらの修正は、パーマネントのタイプが変更される効果の後、他のパワーやタフネスを変更する効果の前に適用される。同じ名前、あるいは同じ表記で示されるカウンターは相互に交換できる。カウンターがプレイヤーに乗ることもありうる。「毒/poison」カウンターについては、rule 102.8 参照。

7) 文章変更効果(Rule 415)

 (《臨機応変/Sleight of Mind》や《魔法改竄/Magical Hack》のような)パーマネントや呪文の能力を書き換える呪文に関する単純なルールは、「カードの文章欄にその単語があったら、それを書き換える。そうでなければ、書き換えない」である。コピー・カードやトークンについては、文章を見ることはできないが、それがコピー・カードやトークンでないのと同じように、文章欄に文章があるものとして扱う。

415.1. 効果の中には、スタックに積まれている呪文や能力について、対象、ルール・テキストその他の特性を「修正」する物がある。
415.4. 呪文やパーマネントのテキストを変える効果は、たとえ(カードの名前やクリーチャー・タイプのような)固有名詞にマジックの色や基本地形タイプと同じ単語や文字列が含まれていたとしても、固有名詞を変更することはできない。

8) 無色、および不特定マナ(用語集)

 マナ・シンボルの {1} は不特定マナ・コストを表すときと、無色マナの生成を表すときの両方に用いられる。カードに「あなたのマナ・プールに{1}を加える」と書いてあった場合、カードに「あなたのマナ・プールに無色マナを1つ加える」と書いてあるのと全く同じである。

【無色マナ/Colorless mana】
 (数字)、(X)、(Y)、で表されるマナ・シンボルは、無色マナあるいは不特定マナ・コストである。
【マナ・シンボル/Mana Symbol】
 マナ・シンボルとは、(W), (U), (B), (R), (G), (0), (数字), (X), (Y) である。
 色のついたマナ・シンボルは、それぞれ1つの色マナを示す。(W)は白、(U)は青、(B)は黒、(R)は赤、(G)は緑である。
 ((1)のような)数字のシンボルは不特定マナ・コストと呼ばれ、どの色のマナでも、あるいは無色のマナでも支払うことのできるマナの量を示している。
 (X)、(Y)のシンボルは、未定の量のマナを示している。コストに(X)や(Y)を含む呪文や能力は、プレイするときにそのコントローラーが値を決定する。
 (数字)、(X)、(Y)は、呪文やマナ能力の「あなたのマナ・プールに[マナ・シンボル]を加える」という文脈においては、無色マナを表すために用いられる。
 (0)のシンボルは0マナを示し、呪文や起動型能力のプレイにコストがいらないときの場所取りとして使われる。マナ・コストが0マナの呪文や能力も、1以上のコストを持つ呪文と同じようにプレイされる。自動的にプレイされるわけではない。

特定カードの裁定

1) 《液状の火/Liquid Fire》

 《液状の火/Liquid Fire》は、ダメージを対象のクリーチャーとそのクリーチャーのコントローラーの間に分ける。この呪文が1つ(クリーチャー)しか対象を取らないので、複数の対象に分割するときのルールは適用されない(呪文や能力の効果で複数の対象に何かを分けるときには、その分割は呪文や能力の宣言時に宣言される。また、それぞれの対象は最低でも1つの効果を受けなければならない)。《液状の火/Liquid Fire》のダメージ分割は解決時に行われる。望むなら、5点全てをクリーチャーに、あるいはプレイヤーに与えることも可能である。

《液状の火/Liquid Fire》
液状の火は合計5点のダメージを、対象のクリーチャー1体とそのクリーチャーのコントローラーにあなたが望むように振り分けて与える。
Liquid Fire deals 5 damage divided as you choose between target creature and that creature's controller.

2) 《合金のゴーレム/Alloy Golem》とフェイジング

 フェイズ・アウトしている《合金のゴーレム/Alloy Golem》は、最初に場に出たときに選択した色を覚えている。それは、フェイズ・アウトしているときの色であり、現行のカードではこれに関係するものはない。フェイズ・インしてきた時も、同じ色である。新しい色を選択することはない。

《合金のゴーレム/Alloy Golem》
合金のゴーレムが場に出るに際し、色を1色選ぶ。
合金のゴーレムは選んだ色になる。(それは同時にアーティファクトでもある。)
As Alloy Golem comes into play, choose a color.
Alloy Golem is the chosen color. (It's still an artifact.)

3) 《ムチ打ち人/Whipkeeper》と再生

 《ムチ打ち人/Whipkeeper》は、クリーチャー一体がそのターンの間に受けていたダメージの合計分のダメージをそのクリーチャーに与える。そのクリーチャーに与えられたダメージが軽減された場合、そのダメージは与えられたことにはならないので、《ムチ打ち人/Whipkeeper》の能力によるダメージには考慮されない。クリーチャーが致死ダメージを受けた後で再生した場合、そのダメージは、既に取り除かれてはいるけれども、《ムチ打ち人/Whipkeeper》の能力によるダメージのために考慮される。

《ムチ打ち人/Whipkeeper》
T: ムチ打ち人は、対象のクリーチャー1体に、そのクリーチャーがこのターンにすでに与えられたダメージと同じ値のダメージを与える。
T: Whipkeeper deals damage to target creature equal to the damage already dealt to it this turn.

4) 《サーボの網/Tsabo's Web》とスレッショルド土地(《蛮族のリング/Barbarian Ring》など)

 スレッショルドの条件を満たしていないとき、スレッショルド能力を持つカードはスレッショルドの文章を持たないものとして扱われる。従って、スレッショルド条件を満たしていないときには、《蛮族のリング/Barbarian Ring》の起動型能力はマナを生み出すものだけである。つまり、《サーボの網/Tsabo's Web》が場に出ているときにも、《蛮族のリング/Barbarian Ring》は通常どおりアンタップするということになる。スレッショルドの条件を満たしているときには、《蛮族のリング/Barbarian Ring》は起動型能力を持っているので、通常どおりにアンタップすることはない。

《サーボの網/Tsabo's Web》
サーボの網が場に出たとき、カードを1枚引く。
マナを生み出さない起動型能力を持つ土地は、そのコントローラーのアンタップ・ステップの間にアンタップしない。
When Tsabo's Web comes into play, draw a card.
Lands with an activated ability that doesn't produce mana don't untap during their controllers' untap steps.
《蛮族のリング/Barbarian Ring》
T: あなたのマナ・プールに(R)を加える。蛮族のリングはあなたに1点のダメージを与える。
スレッショルド ― (R), T, 蛮族のリングを生け贄に捧げる:蛮族のリングは、対象のクリーチャー1体か対象のプレイヤー1人に2点のダメージを与える。(この能力は、あなたの墓地にカードが7枚以上ある場合にしかプレイできない。)
T: Add R to your mana pool. Barbarian Ring deals 1 damage to you.
Threshold - R, T, Sacrifice Barbarian Ring: Barbarian Ring deals 2 damage to target creature or player. #(Play this ability only if seven or more cards are in your graveyard.)#

5) 《友なる石/Fellwar Stone》と《隕石のクレーター/Meteor Crater》

 あなたが《友なる石/Fellwar Stone》をコントロールしていて、あなたの対戦相手が《隕石のクレーター/Meteor Crater》をコントロールしているとき、《友なる石/Fellwar Stone》はあなたの対戦相手がコントロールしているパーマネントの色に応じたあらゆるマナを生み出すことができる。

《友なる石/Fellwar Stone》
T: あなたのマナ・プールに、対戦相手のいずれかの土地が生み出せるマナと同じタイプのマナを、1点加える。
T: Add to your mana pool one mana of any color and type that a land an opponent controls could produce.
《隕石のクレーター/Meteor Crater》 T: あなたがコントロールするパーマネントの色1色を選ぶ。あなたのマナ・プールに、その色のマナ1点を加える。 T: Choose a color of a permanent you control. Add one mana of that color to your mana pool.

訂正

 オラクル(TM)はまもなく更新される。同時に、大きな変更がどういう理由によってなされたかを示す文書も公開される予定である。


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